水草水槽の肥料はどれくらい入れるべき? ― 多すぎる?少なすぎる?施肥量の考え方 ―

2025年12月16日

※原文
Fertilizer dosing guide for planted aquariums; when to dose more or less ?
https://www.2hraquarist.com/en-mk/blogs/fertilize-planted-tank/how-much-to-dose

原文の構成と論点を保ちつつ、日本語で整理しています。


肥料は多く入れるべき?少なく入れるべき?

答えは 「水槽のタイプによって変わる」 です。

植栽量が少ない水槽に大量の栄養を入れると、水槽は不安定になります。
そこにコケの胞子が入り込んだり、何らかのきっかけが加わると、
豊富すぎる栄養がコケの問題を一気に悪化させます。

一方で、水草がたくさん植えられた水槽で、
必要な栄養を十分に与えなければ、水草は飢え、弱り、
それが結果的にコケの発生を引き起こします。

ただし重要なのは、
水草は非常に柔軟で、幅広い栄養レベルに適応できる
という点です。

控えめな施肥を行えば、水草はゆっくり成長します。
この「成長をあえて抑える」アプローチは、
管理しやすく、初心者にも扱いやすいため、私たちはよく勧めています。


正反対の2つの施肥アプローチを比べてみる

ここでは、施肥思想が大きく異なる
2つの代表的な方法を比較します。

  • EI(Estimative Index)方式
    → 水中に多量の栄養を入れる

  • ADA方式
    → 水中は控えめ、底床(ソイル)を重視

ほとんどの水草水槽は、この 両極端の中間 に位置します。
両方を理解することで、自分の水槽をどう管理するか選べるようになります。


EI(Estimative Index)方式とは

EI方式は、
水草の成長を一切制限しないことを目的とした、高栄養の施肥法です。

基本的な考え方は、

水草が十分に育てば、コケよりも優位に立てる

というものです。

EIでは必要量を正確に見積もる代わりに、
あえて多めに入れ、週末に50%の水換えでリセットします。

ただし、
植栽量が少ない水槽での過剰施肥は、コケを含む不安定さを招く原因になります。


ADA方式とは

ADA方式は、
栄養豊富なアクアソイルと、控えめな液体肥料を組み合わせる方法です。

底床が多くの栄養を供給するため、
水中への施肥量は少なく抑えられます。

また、魚の飼育数も水槽内の栄養量に影響します。

ADAのような控えめな施肥システムでは、
こまめに施肥し、栄養が枯渇しないように管理することが重要です。


EI方式とADA方式の施肥量比較(週あたり)

栄養素 EI ADA
カリウム(K) 20〜30 ppm 20〜24 ppm
硝酸塩(NO3) 15〜20 ppm 1.5〜6 ppm
リン酸(PO4) 2〜6 ppm 1.4〜4 ppm
マグネシウム(Mg) 5〜10 ppm 未定義
鉄(Fe) 0.5〜1 ppm 0.03〜0.06 ppm

※ ppm = mg/L


ADA方式の水槽例

ADA方式(APT ZERO)で育成された水槽では、
少ない栄養量でも非常に良好な成長が見られます。

特に、

  • 岩組み(イワグミ)

  • アヌビアスやミクロソリウムなどの成長が遅い水草

  • 植栽量が少ないレイアウト

に向いています。

成長が穏やかでメンテナンスが楽なため、
コケを抑えながら水槽の安定を保ちやすい方法でもあります。


EI方式の水槽例

EI方式は、
成長が速く、栄養要求量の高い水草を育てるのに適しています。

  • 水草が大きく、速く育つ

  • 難しい水草でも成功しやすい

一方で、

  • 頻繁なトリミングと植え直しが必要

  • 手入れが追いつかないと、過密・劣化・コケ発生が起きやすい

という側面もあります。


結局、どの方法を選ぶべきか?

私たちは、

  • EIは多くの水槽には少しリッチすぎる

  • ADAは長期的にはやや控えめすぎる(ソイルが消耗するため)

と考えています。

そのため、多くの水槽では
両者の中間的な施肥量を採用しています。


私たちが採用している中間的な施肥量

栄養素 週あたり
カリウム(K) 10〜18 ppm
硝酸塩(NO3) 5〜12 ppm
リン酸(PO4) 2〜8 ppm
マグネシウム(Mg) 2〜6 ppm
鉄(Fe) 0.05〜0.6 ppm

この考え方が、
APT Completeの基礎設計になっています。


なぜ、あえて成長を遅くするのか?

最大の理由は、
多くの人がトリミング管理についていけないからです。

水草は育てるより、
適切に切り戻し、維持する方が難しいのが現実です。

成長が速すぎると、

  • 手入れが遅れる

  • 過密になる

  • 水草が弱る

  • コケが出る

という悪循環に陥りやすくなります。


栄養を多く入れると色は良くなる?

これは長年の誤解です。

実際には、

  • 硝酸塩が低い方が赤くなる水草

  • EI環境では赤くなりにくい種

も数多く存在します。


施肥量を控えめにするのが向いている水槽

  • イワグミ・ネイチャースタイル

  • 成長を抑えて管理したい

  • 安定性・低メンテナンス重視

  • 植栽量が少ない

  • 特定の高さ・形を保ちたいレイアウト

  • コケの問題を抱えている

  • 硝酸塩制限が必要な水草を育てたい


栄養豊富な施肥が向いている水槽

  • 頻繁なトリミング・植え直しができる

  • 難しい水草を育てたい

  • 速い成長・大きく丈夫な水草を求める

  • 底床の50%以上が有茎草

  • コケを抑えられる管理技術がある


まとめ

施肥量に「正解」はありません。

重要なのは、

  • 植栽量

  • 管理にかけられる時間

  • 水槽の安定性

に合わせて、
多すぎず、少なすぎない施肥量を選ぶことです。


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