水草水槽の肥料はどれくらい入れるべき? ― 多すぎる?少なすぎる?施肥量の考え方 ―
※原文
Fertilizer dosing guide for planted aquariums; when to dose more or less ?
https://www.2hraquarist.com/en-mk/blogs/fertilize-planted-tank/how-much-to-dose
原文の構成と論点を保ちつつ、日本語で整理しています。
肥料は多く入れるべき?少なく入れるべき?
答えは 「水槽のタイプによって変わる」 です。
植栽量が少ない水槽に大量の栄養を入れると、水槽は不安定になります。
そこにコケの胞子が入り込んだり、何らかのきっかけが加わると、
豊富すぎる栄養がコケの問題を一気に悪化させます。
一方で、水草がたくさん植えられた水槽で、
必要な栄養を十分に与えなければ、水草は飢え、弱り、
それが結果的にコケの発生を引き起こします。
ただし重要なのは、
水草は非常に柔軟で、幅広い栄養レベルに適応できる
という点です。
控えめな施肥を行えば、水草はゆっくり成長します。
この「成長をあえて抑える」アプローチは、
管理しやすく、初心者にも扱いやすいため、私たちはよく勧めています。
正反対の2つの施肥アプローチを比べてみる
ここでは、施肥思想が大きく異なる
2つの代表的な方法を比較します。
-
EI(Estimative Index)方式
→ 水中に多量の栄養を入れる -
ADA方式
→ 水中は控えめ、底床(ソイル)を重視
ほとんどの水草水槽は、この 両極端の中間 に位置します。
両方を理解することで、自分の水槽をどう管理するか選べるようになります。
EI(Estimative Index)方式とは


EI方式は、
水草の成長を一切制限しないことを目的とした、高栄養の施肥法です。
基本的な考え方は、
水草が十分に育てば、コケよりも優位に立てる
というものです。
EIでは必要量を正確に見積もる代わりに、
あえて多めに入れ、週末に50%の水換えでリセットします。
ただし、
植栽量が少ない水槽での過剰施肥は、コケを含む不安定さを招く原因になります。
ADA方式とは

ADA方式は、
栄養豊富なアクアソイルと、控えめな液体肥料を組み合わせる方法です。
底床が多くの栄養を供給するため、
水中への施肥量は少なく抑えられます。
また、魚の飼育数も水槽内の栄養量に影響します。
ADAのような控えめな施肥システムでは、
こまめに施肥し、栄養が枯渇しないように管理することが重要です。
EI方式とADA方式の施肥量比較(週あたり)
| 栄養素 | EI | ADA |
|---|---|---|
| カリウム(K) | 20〜30 ppm | 20〜24 ppm |
| 硝酸塩(NO3) | 15〜20 ppm | 1.5〜6 ppm |
| リン酸(PO4) | 2〜6 ppm | 1.4〜4 ppm |
| マグネシウム(Mg) | 5〜10 ppm | 未定義 |
| 鉄(Fe) | 0.5〜1 ppm | 0.03〜0.06 ppm |
※ ppm = mg/L
ADA方式の水槽例
ADA方式(APT ZERO)で育成された水槽では、
少ない栄養量でも非常に良好な成長が見られます。
特に、
-
岩組み(イワグミ)
-
アヌビアスやミクロソリウムなどの成長が遅い水草
-
植栽量が少ないレイアウト
に向いています。
成長が穏やかでメンテナンスが楽なため、
コケを抑えながら水槽の安定を保ちやすい方法でもあります。
EI方式の水槽例
EI方式は、
成長が速く、栄養要求量の高い水草を育てるのに適しています。
-
水草が大きく、速く育つ
-
難しい水草でも成功しやすい
一方で、
-
頻繁なトリミングと植え直しが必要
-
手入れが追いつかないと、過密・劣化・コケ発生が起きやすい
という側面もあります。
結局、どの方法を選ぶべきか?
私たちは、
-
EIは多くの水槽には少しリッチすぎる
-
ADAは長期的にはやや控えめすぎる(ソイルが消耗するため)
と考えています。
そのため、多くの水槽では
両者の中間的な施肥量を採用しています。
私たちが採用している中間的な施肥量
| 栄養素 | 週あたり |
|---|---|
| カリウム(K) | 10〜18 ppm |
| 硝酸塩(NO3) | 5〜12 ppm |
| リン酸(PO4) | 2〜8 ppm |
| マグネシウム(Mg) | 2〜6 ppm |
| 鉄(Fe) | 0.05〜0.6 ppm |
この考え方が、
APT Completeの基礎設計になっています。
なぜ、あえて成長を遅くするのか?
最大の理由は、
多くの人がトリミング管理についていけないからです。
水草は育てるより、
適切に切り戻し、維持する方が難しいのが現実です。
成長が速すぎると、
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手入れが遅れる
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過密になる
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水草が弱る
-
コケが出る
という悪循環に陥りやすくなります。
栄養を多く入れると色は良くなる?
これは長年の誤解です。
実際には、
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硝酸塩が低い方が赤くなる水草
-
EI環境では赤くなりにくい種
も数多く存在します。
施肥量を控えめにするのが向いている水槽
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イワグミ・ネイチャースタイル
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成長を抑えて管理したい
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安定性・低メンテナンス重視
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植栽量が少ない
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特定の高さ・形を保ちたいレイアウト
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コケの問題を抱えている
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硝酸塩制限が必要な水草を育てたい
栄養豊富な施肥が向いている水槽
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頻繁なトリミング・植え直しができる
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難しい水草を育てたい
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速い成長・大きく丈夫な水草を求める
-
底床の50%以上が有茎草
-
コケを抑えられる管理技術がある
まとめ
施肥量に「正解」はありません。
重要なのは、
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植栽量
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管理にかけられる時間
-
水槽の安定性
に合わせて、
多すぎず、少なすぎない施肥量を選ぶことです。