水槽立ち上げ方法 サイクリングとは?ep.2
水草水槽の管理法「2HR Way」の水槽の立ち上げ方法と、APT STARTの使い方について解説します。APT STARTを使用し、事前にサイクリングを行なって水槽を立ち上げれば、コケの発生を抑制することができます。
この情報はデニスの研究に基づいています。
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なぜ水槽をサイクリングして立ち上げるべきなのか?
新しい水槽を立ち上げる際、見た目では「完璧」な水質パラメーターを設定しても、水草が溶けたりコケが発生したりすることはよくあります。これは、まだバクテリアコロニーが確立されていないためです。この点は非常に重要ですが、テストキットなどでは測定することができません。
水槽を立ち上げる際に栄養系ソイルを使用するとアンモニアが放出されます。アンモニアは繊細な水草(組織培養した水草など)や生体にも有害です。ろ過(バクテリアコロニーの発達)が未熟だとアンモニアが硝化作用で迅速に硝酸まで酸化されません。微量のアンモニアと高光量はコケの発生要因となり、水中にアンモニアがあるとコケの成長が促進されます。
サイクリングを事前に行い、水槽内にバクテリアを増やしておけば、コケの発生原因となる有機廃棄物も早く処理できます。立ち上げ初期には一般的に茶ゴケなどが発生しやすいですが、事前のサイクリングでこれらを減少させることができます。
多くのアクアリストは、水槽で初期のコケの発生は避けられないと考えがちです。しかし、事前にサイクリングを行い、バクテリアを増やしておくことで、コケの発生を抑えることができます。コケとの闘いに悩む初心者にも、この方法は特におすすめです。
アンモニアが原因で水草がコケに覆われることはよくあります。
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アンモニアは水草の栄養素では?
水草にとってアンモニアは重要な窒素源ですが、同時にアンモニアには毒性があり、水中に過剰に存在することは好ましくありません。理想的な環境は、底床にアンモニアが豊富にあり、水草が根からアンモニアを取り込むことができる状態です。
水中のアンモニアは生体や水草にとって有害であり、またコケの発生を促進します。特に強い光の下ではこのリスクが増大します。コケが水草の葉を覆うと、水草は呼吸することができず、新しい環境への適応が困難になります。
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サイクリングのやり方(APT STARTの使い方)
- APT STARTをソイルの下に敷き、レイアウトを完成させます。(APT Feastを使用する場合はAPT STARTは必要ありません)前の水槽があれば、フィルターやソイル(新旧を半分ずつ使う)を再利用すると、立ち上げがよりスムーズになります。ソイルを再利用する場合は新しいソイルの上から古いソイルを被せてください。
- 水槽に水を入れて、フィルターのみを動かします。この間、ライトはつけず、CO2や液肥も添加しません。
- 1〜2週間後、パックテストなどでアンモニア値を測定します。(この期間、水換えを多くするとサイクリングを短くすることができます)
- アンモニア値が0ppmになったら水草を植えて、通常稼働を開始します。初めはライトの明るさを弱くするとコケを抑制できます。
- APT ZEROの投与を開始します。最初の数週間は、水換えの量を多め(70%~90%)にしたり、水換えの回数を増やしたりします。
レイアウトの完成後、1〜2週間フィルターだけを使って水を循環させます。この期間中、油膜が出たら多めに水を交換してください。1〜2週間後、アンモニアを測定し反応があれば、さらに1週間サイクリングを行います。アンモニアの値が0になるまでこの手順を続けます。
APT STARTを使用する際、最初の3〜4日間は水換えを避けてください。油膜の発生が見られる場合は、90%以上水換えしてください。
アンモニア値が0になったら、水草を植えて通常稼働を開始します。水草は底床に対して70%以上植栽するとより早く環境が安定しやすくなります。成長が遅い水草(例:1-アルテルナンテラ・レインキー、2-ブセファランドラ、3-ハイグロフィラ・チャイ、クリプトコリネ・フラミンゴなど)などの繊細な水草は、この段階では追加しないようにします。これらの水草は溶けやすいため、水槽の環境が安定してから3~4週間後に追加することをおすすめします。
水草は新しい環境に適応するのに通常1~2週間かかります。この期間中は水換えの頻度を増やしてください。最初の数週間はコケ類が発生しやすく、水草の葉が溶けることもあります。水草の古い葉は回復しないため、トリミングが必要です。有茎草は、健康な上部が15cmに達したら植え替えを行います(古い茎や根は捨てます)。魚の追加は、さらに2~3週間経ってから行います。
始めは光の強さも控えめに(60umols以下)します。水草が順調に成長し、枯れた葉やコケが見られなくなったら、光量を増やしても大丈夫です。
以前の水槽の水草を、新しい水槽で使用する場合は、下記の記事を参考にしてください。
培養カップの選び方については下記の記事が参考になります。
下の写真の小さな貝は、一般的には害虫と考えられていますが、バクテリアコロニーの成熟を早めてくれます。
新しい水槽に貝類を持ち込みたくない場合は、APT FIXまたはAPT FIX IIを使用して、5%の溶液を作り水草を10秒程度浸します。(例:水20mlに対してAPT FIX / APT FIX IIを1ml)
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サイクリングを行う際の注意点
水草水槽では、適切なガス交換と水流が欠かせません。外部フィルターの流量は、水槽の水量に対して6〜10倍のものが理想的です。そして、水流が一定に保たれるように定期的なメンテナンスが重要です。これにより、水草や魚に最適な環境を提供できます。
ボール型のろ材は、リング形状のろ材に比べて流量を低下させることがあります。サブフィルターやクーラーを接続することも流量に影響を及ぼす可能性があります。CO2の泡が水の流れに乗って均等に広がっているかを確認することが重要です。
水面に油膜ができると、ガス交換が妨げられ、酸素供給が低下する危険があります。サーフェススキマーやアウトフロースキマーを使用して水面を清潔に保ちながら、十分な水流を確保してください。
サイクリング中は水温を29度に保つと、バクテリアの増殖スピードが上がります。水草を植栽した後は、水温を22〜26度に調整してください。
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まとめ
バクテリアはアンモニアの増加にすぐに適応できないため、事前にサイクリングを行うことで水質を安定させることができます。
コケが一度発生すると、その対処には多くの時間と労力が必要です。水草を早く植えたい、生物を早く入れたいという気持ちは理解できますが、アンモニアが水槽内に残らないようにするためにはバクテリアを増やしておくことが大切です。事前にサイクリングを行い、最初からきれいで健康な水草水槽を楽しむための準備をお勧めします。
水槽の立ち上げ方法については、こちらの記事も参照ください。
次はep.3 照明の点灯時間とCO2添加時間の設定方法について詳しく解説します。