水槽にコケが生える原因について
この記事では、水槽内でコケが発生する主な原因についてわかりやすく解説します。
コケの原因を正しく理解することで、効果的にコケを防ぎ、美しく健康的な水草水槽を長期間維持することができるようになります。
この記事の内容は2HR Wayに基づいています。
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水槽にコケが生える原因について
水槽でコケが発生する一番の原因は、有機廃棄物の蓄積です。
有機廃棄物とは、枯れた水草の葉や、魚・エビなどの排泄物のことを指します。これらが分解される過程で発生するアンモニアなどは、コケの栄養源となってしまいます。
そのため、有機廃棄物やアンモニアをしっかり分解できる濾過システムを持つ、成熟した水槽を維持することが重要です。こうした環境では、コケの発生を大幅に減らすことができます。
光はコケの成長を助ける要因の一つですが、光そのものが原因ではありません。照明時間や光量を調整すればコケの成長を遅らせることはできますが、本質的な対策は有機廃棄物とアンモニアの管理です。
健康な水草は、自身を守るために抗菌作用のある化学物質や酵素を作り出します。十分なエネルギーを持つ水草ほど、コケに対する抵抗力が高くなります。
しかし、栄養不足やCO2濃度の低下が起こると、水草は弱り、防御に必要なエネルギーが不足してしまうため、コケに侵されやすくなります。
つまり、水草水槽において不健康な水草こそがコケ発生の最大の原因です。
コケが見られる場合は、まず水草の健康状態を見直しましょう。栄養バランス、CO2供給、水流、水質など、水草が元気に成長できる環境が整っているかを確認することが大切です。
健康で元気な水草がたくさんある水槽では、コケが生える余地はほとんどありません。
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コケの生える原因は窒素やリンでは?
以前は、硝酸塩やリンがコケの主な原因だと考えられていました。
しかし、植物学者のトム・バー博士(Dr. Tom Barr)の研究によって、これらの物質は直接的な原因ではないことが明らかになっています。
ただし、硝酸塩やリンが極端に多すぎて生体が生存できないレベルになると、話は別です。そのような過剰な状態では、水槽全体のバランスが崩れ、結果的にコケの発生を助長することがあります。
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コケが発生しやすくなる3つの主な要因
1. 環境の変化
たとえば、水草をCO2濃度の高い水槽から低い水槽へ移すと、水草は急激な環境変化に対応するため、大きなストレスを受けます。
CO2が少ない環境では、水草は炭素不足に陥らないように多くのエネルギーをCO2吸収に費やす必要があり、その過程で葉から酵素やタンパク質などの有機物を水中に放出します。このとき、コケはその放出された有機物を餌として利用し、付着・増殖しやすくなります。
そのため、新しい水槽に水草を導入した直後、古い葉にコケが付きやすいのは自然な現象です。水草を健康に保つためには、水槽環境をできるだけ安定させることが重要です。
温度、pH、CO2濃度、栄養バランスなどの条件が頻繁に変わると、水草はそのたびに適応のための内部調整を行い、古い葉が急速に劣化したり、溶けてしまうことがあります。また、栄養が不足している場合も同様です。
水草は新芽の成長を優先するため、古い下葉を犠牲にしてエネルギーを再配分します。これにより、古い葉が傷み、コケの温床となることがあります。
写真のように劣化した葉は一度傷むと回復しません。そのため、早めにトリミングで取り除くことが重要です。
有茎草の場合、成長とともに下の葉が自然に老化・劣化します。これは水草が新しい部分にエネルギーを集中させるためで、避けられない現象です。
トリミングを繰り返すうちに、古い葉は劣化するため、一定のサイクルで**植え替え(差し戻し)**を行う必要があります。
詳しい方法については、以下の記事をご覧ください。
2. 生体の数が多い
魚の数が多いと、水槽内でアンモニアなどの有機廃棄物が増加し、コケが発生しやすくなります。特に、新しく魚を追加する際には注意が必要です。バクテリアがアンモニアの増加に対応して分解能力を高めるまでには時間がかかるため、まだ安定していない立ち上げ初期の水槽に魚を追加すると、水質が悪化しコケが発生しやすくなります。
魚の多い水槽をうまく管理する方法については、以下の記事をご覧ください。
3. メンテナンスが不十分な水槽
水草水槽では、有機廃棄物の蓄積がコケ発生の主な原因となります。エビや貝、バクテリアなどは有機物を分解してくれますが、それだけでは十分ではありません。
特に、**底床にたまった汚れ(デトリタス)**は定期的に取り除く必要があります。スポイトやホースを使って底床を軽くかき上げ、サイフォンの原理でゴミを吸い出すことで、水槽内の有機廃棄物を効果的に除去できます。
やり方はとても簡単です。水換えの際に、スポイトでソイルの表面約1cmを軽く吹き上げ、そこにたまった汚れ(有機廃棄物)を吸い出すだけです。
このとき、深さ1cm以内にとどめることが大切です。あまり深くまでかき混ぜてしまうと、ソイル内部に生息しているバクテリアのコロニーを傷つけてしまうおそれがあります。
このように、定期的に底床の表面を掃除することで、水槽内の環境を清潔に保ち、コケの発生を効果的に防ぐことができます。
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できるだけ水槽にコケが生えないようにするには?
1.光の強さを調整する
例えば、立ち上げたばかりの水槽で、いきなりライトを全開(100%)で点けてしまうと、コケが発生しやすくなります。これは、ろ過バクテリアがまだ十分に育っておらず、水質が安定していないためです。
そのため、最初の2〜3ヶ月はライトの明るさを少し控えめに設定し、水槽が落ち着いてから徐々に明るくしていくようにしましょう。こうすることで、水草が元気に育ちやすくなり、コケの発生も防ぎやすくなります。
ライトの点灯時間
水槽を立ち上げたばかりの頃は、5〜6時間程度の点灯がおすすめです。環境が安定していない時期に長時間ライトを点けると、コケが発生しやすくなります。
一方、水槽が安定してからは、7〜10時間の点灯が一般的です。
ただし、10時間以上ライトを点けても、水草の成長はほとんど変わらず、コケのリスクだけが高まるため、無理に長時間点灯する必要はありません。
ブセファランドラのように成長がゆっくりな水草でも、健康な状態を保っていればコケに対する耐性があります。
たとえば、デニスの水槽では**200 µmol以上の高い光量(PAR)**で水草を育成していますが、コケの発生はほとんど見られません。
つまり、**コケを防ぐ最大のポイントは「光量」ではなく「水草の健康状態」**ということです。
2. 水草をたくさん植える
水槽を立ち上げるときは、**できるだけ多くの水草を密に植える(底床の70%以上を目安)**ことが大切です。あわせて、CO₂濃度(約35ppm)、十分な栄養素、適切な光量、水の流れを安定させることで、水草は健康に成長します。
これらの条件を整えることで、コケが繁殖しにくい環境を作ることができます。
水草の健康不良の主な原因はCO₂不足です。CO₂は水草の成長に欠かせない炭素源であり、不安定な濃度はコケの発生を招くことがあります。水草が健康に育てば、自然とコケも減少します。
左がCO2不足、右が健康なロタラ・マクランドラ
3. 水槽を清潔に保つ
有機廃棄物の蓄積を防ぐことが、コケ対策の基本です。
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立ち上げ後3か月未満の水槽には、生体を過剰に入れない。未成熟な水槽では排泄物がコケの原因になります。
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水換え時に底床も掃除する。
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枯れた葉や損傷した下葉はトリミングや必要に応じて植え替え。
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フィルターを定期清掃して水流を安定させる。
これらを実行することで、水槽環境を清潔に保ち、コケの発生を抑えられます。
4. 良好なろ過システム
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酸素供給を確保:良好なガス交換で水中の酸素を高め、バクテリアの活動を活発にします。スキマーを使い、水量の6〜10倍の流量を目安にすると効果的です。
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栄養系ソイルの使用:底床にはAPT Feastなどの栄養豊富なソイルを使用すると、バクテリアコロニーが素早く形成され、水草の成長も助けます。
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生物ろ過の補助:エビや貝を加えて、有機廃棄物の分解をサポートします。
これらを組み合わせることで、水槽内の環境を安定させ、コケの発生を抑えることができます。

水槽にコケを生やさないためのポイント
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水草を底床の70%以上に植える
底床の30%以下しか植えないと、水草がコケに対して弱くなります。 -
大きく丈夫な水草を選ぶ
例:エキノドルス、ロータス、クリナムなどは、前景草やモスよりコケに強いです。 -
成長の早い水草を活用する
例:ウォーター・ウィステリア、ロタラなどの有茎草は、陰性水草やアルテルナンテラ・レインキーよりも回復力があります。 -
特定の領域にコケが出る場合の対策
その部分に丈夫な水草を追加で植えることで、コケの発生を抑えることができます。
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水槽にコケが生えた場合の、種類別対策方法
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まとめ
ここで紹介した内容はすべて**「2HR Way」**の手法に基づいています。このブログでは、2HR Wayを実践するために必要な機材や、日々の管理方法まで詳しく解説しています。