水草が溶ける理由と培養カップの選び方
今回は、水草がなぜ溶けてしまうのかと、組織培養カップを選ぶ際のポイントについて説明します。大事に育てている水草が突然溶けたり、新しい水槽を立ち上げた際に水草が枯れてしまうとショックですよね。水草が溶ける理由を理解することで、これらの問題を未然に防ぐことができますので、最後までお読みいただければと思います。
今回の情報は、THE 2HR AQUARISTのデニスの研究成果に基づいています。
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なぜ水草は溶ける(枯れる)?
水草が溶ける原因は多岐にわたりますが、そのほとんどが環境の変化に適応しようとする際に起こることがあります。特に、水槽を立ち上げたばかりの時期や、水草を長期間維持しているときに、この現象がよく見られます。
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水槽立ち上げ時に水草が溶けたり枯れたりする理由
水槽を立ち上げる際、組織培養した水草を使用することが一般的です。しかし、組織培養した水草は非常に水質に敏感であり、特に水槽を立ち上げたばかりの時期には注意が必要です。なぜなら、水槽を立ち上げる際には、土壌からアンモニアが放出されることがあるからです。水槽のサイクリング(生態系を安定させるプロセス)を行わずに、水槽を立ち上げてからすぐに水草を植えると、高濃度のアンモニアに水草がさらされてしまいます。
アンモニアは水草にとって必要な窒素源であり、栄養素として重要です。しかし、高濃度のアンモニアにさらされると、水草が溶けてしまうことがあるのです。したがって、水槽を立ち上げる際には、頻繁に水換えを行うか、サイクリングを行うことが大切です。
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買ってきた水草が溶けた(枯れた)
水槽に購入した水中葉を追加したとき、これらの水草が溶ける場合には、先ほどのケースと同様の理由が当てはまることがあります。しかし、その他にも考えられる理由として、購入した水草と自分の水槽の環境の違いが挙げられます。水質、ライトの明るさ、水流の強さ、CO2の濃度、栄養素の濃度など、これらの要素は水槽ごとに異なります。
水草は新しい環境に適応しようとする際に、下の葉を犠牲にし、新しい葉にエネルギーを集中させることがあります。そのため、水草の下葉が溶けたりすることがあります。ただし、新しい葉が健康であれば、水草は新しい環境に適応できている兆候であり、あまり心配する必要はありません。
水中葉を購入する際には、水草が健康であるかを注意深く観察することが重要です。不健康な水中葉を購入してしまうと、環境の変化に適応できずに水草が溶けてしまう可能性が高まります。
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組織培養カップの選び方
組織培養した水草について、古いものは水草が弱っており、環境の変化に対応できないことがあります。カップを上から見て健康に見えても、裏側で寒天が変色していたり、寒天が溶けて根が十分に発達していない場合、それは水草が古くなっている兆候です。注意深く確認することで、元気な水草を選ぶことができます。
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水草が溶ける(枯れる)のは自分の水槽が原因?
購入した水草が溶ける原因には、自分の水槽の状態も関与していることがあります。管理の行き届いた水槽では、しっかりとCO2を供給しています。しかし、自分の水槽のCO2濃度が低い場合、水草はこれまで十分なCO2を吸収できていたにもかかわらず、急にCO2にアクセスできなくなり、苦しむことがあります。同様に、不十分なガス交換により酸素濃度が低い場合も、水草が枯れたり溶けたりする原因となります。したがって、これらの要因が水草の健康に影響を与える可能性があることを理解し、水槽の環境を適切に管理することが重要です。
水上葉の水草についても同じことが言えます。大気中には約400ppmのCO2が含まれていますが、CO2を添加しない水槽ではCO2濃度が2〜3ppmほどに低下します。水上葉は通常、太陽の光や豊富なCO2、そして酸素がある環境で健康に育ちます。そのため、水上葉が上手に育たない主な理由は、CO2濃度や不適切なガス交換が関与していることがあります。
水槽を立ち上げた際から適切なCO2供給(約30ppm)を行うことは非常に重要です。また、良好なガス交換を確保することで、水草が環境の変化に適応しやすくなります。こうした対策を講じることで、水中葉への移行を手助けすることができます。
水温を低くすることも良い方法です。
水温を22〜23度に保つことで、水草の代謝がゆっくりと進行します。代謝が緩やかになることで、水草は環境の変化に適応するのに必要な時間を確保できます。
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おすすめの立ち上げ方法
水槽を立ち上げる際には、サイクリングを行ってから水草を植え、CO2を30ppmに設定し、良好なガス交換を確保し、液体肥料を投与することで、不安定な初期段階をスムーズに乗り越えることができます。ただし、水槽を立ち上げたばかりの期間は、光量を強く設定すると、コケの発生リスクが高まります。そのため、環境が安定するまで(約2〜3ヶ月)は光量を控えめに設定し(光強度を60umols以下に保つ)、水槽を安定させることをおすすめします。
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長期維持した水草がいきなり溶けた
アヌビアス、ミクロソリウム、ブセファランドラなどの陰性水草は、代謝がゆっくりで成長が遅いという特徴を持っています。また、これらの水草の葉は他の種類に比べて硬質です。そのため、環境が悪化しても症状が現れるのに時間がかかります。さらに、見た目が健康に見えても、実際には葉の内部で問題が進行していることがあるため、水草が苦しんでいることに気づかないことがあります。
そのため、これらの陰性水草は環境が悪化している場合に、急に溶けたりすることがあります。このような症状が現れた場合に、初めて水槽内の環境に問題があることに気づくことがあります。
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コケ取り剤 APT FIXを使用して溶けた
APT FIXを使用した場合も同様のことが言えます。コケが生えた水草の葉にAPT FIXを使用すると、葉が傷むことがあるのは、元々葉が内部で問題を抱えていたためです。基本的に、健康な水草の葉はAPT FIXの刺激に対して耐性を持っており、傷むことはほとんどありません。
実際、水草の葉にコケが生えるのは、水草自体が健康でない場合が多いことから、コケの発生は水草の健康状態を示すサインとも言えます。したがって、水草を健康に育てるためには、水質やライト、栄養などの環境条件を適切に管理することが重要です。
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痛んだ葉はどうすれば良い?
コケが水草に生えてしまった場合、それを放置すると水草は酸素、CO2、光へのアクセスが制限され、結果的に枯れてしまいます。枯れた葉は再生することができないため、早めに対処する必要があります。コケが生えた水草は放置せず、できるだけ早く対処することが大切です。APT FIXを使ってコケを取り除くか、傷んだ葉を切り取り、同時に水槽の環境を改善することが重要です。
水槽を長期間維持すると、有機廃棄物が溜まることがよくあります。有茎草を繰り返しトリミングすると、下の葉が次第に傷むことがあります。また、フィルターの掃除を怠るとゴミがたまり、水の流れが弱まることがあります。流れが弱まると、水草の葉に有機廃棄物がたまり、それがコケの発生を促すことになります。
水草の健康を維持するために、光の供給も非常に重要です。新しい芽が出てこない場合、それは光が不足している可能性も考えられます。水槽を長期間維持すると、水草が繁茂し、影ができることがよくあります。そのため、水草に十分な光が当たっているかどうかを確認する必要があります。
一般的に、陰性水草は育てやすいと思われがちですが、実際にはそう簡単ではありません。これらの水草は広範囲の水質に適応でき、光量の要求が少ないことがありますが、長期間にわたって健康に育てるには安定した環境が必要です。
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まとめ
陰性水草は成長が遅いため、多くの人が大切に育てています。代謝が遅いため、頻繁なトリミングの必要が少なく、管理が比較的容易です。ただし、これらの水草が不健康で苦しんでいても、その兆候はわかりにくいことがあります。
陰性水草の健康状態を保つためには、定期的に以下の点をチェックすることが重要です。水草の葉にコケが生えていないか、新しい芽が出ているか、葉や根元に汚れがたまっていないかなど、注意深く確認しましょう。これによって、水草の健康を保ちながら、美しい水槽を維持することができます。