水草水槽のCO2濃度を測定する方法 ep.8
この記事では、水草水槽の管理方法である2HR Wayを実践する際に、CO2濃度を測定するための簡単な方法であるPH降下法について詳しく説明します。
この情報は、水草水槽に関する研究で知られるTHE 2HR AQUARISTのデニスによる研究結果に基づいています。
水草育成の研究者デニスが考案したのが、PH降下法です。この方法は、誰にでも簡単に理想的なCO2濃度に調整できる素晴らしい手法です。
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水草水槽にCO2添加はなぜ必要?
水草水槽では自然界の川や湖とは異なり、水槽内でCO2は不足します。自然の水草が育つ川や湖には十分なCO2の供給源がありますが、水草水槽は閉じられた環境であるため、外部からのCO2供給が必要です。水草は光合成に炭素を利用し、十分なCO2がないと成長が制限されるため、水草水槽ではCO2を添加することで水草の健康な成長を促進することができます。
植物を構成する成分の約45%は炭素であり、水草は窒素と比較して、質量で約20倍以上もの炭素を必要とします。これは、水草が炭素を大量に利用して成長し、栄養源として非常に重要であることを示しています。
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陸上と水中のCO2濃度の違い
陸上の大気中には約400ppmのCO2が含まれています。一方、CO2を添加しない水槽では、大気と水の間での平衡の作用により、CO2濃度は約2〜3ppmまで低下します。陸上の植物は大気中の炭素を比較的容易に吸収しますが、水中の環境では同じようにはいきません。水中に生育する有茎草は、水中のCO2濃度が低い場合、大気中のCO2にアクセスしようとし、茎の成長にエネルギーを費やすことがあります。これが、水槽内のCO2濃度が低いと有茎草の茎が過剰に伸びる主な理由です。
上記から分かるように、水草水槽ではCO2を追加し、水草に必要な炭素を供給することが非常に重要です。一般的におすすめされる水草水槽内のCO2濃度は、30〜35ppmの範囲です。ほとんどの水草はこの濃度の下で健康に成長し、最適な条件で育つことができます。
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CO2添加による魚やエビへの影響は?
CO2を水草水槽に添加すると、水中のPHが低下し、魚やエビに対する影響を懸念する方もいるかもしれません。しかし、実際には自然界ではPHの低い環境や変動が一般的です。詳細については、以下の記事をご覧いただけます。
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水草を観察することでCO2濃度を知ることは可能?
水草水槽でのCO2管理では、最もCO2要求量の多い水草を基準にすべきです。高いCO2を必要とする水草は、CO2濃度が異なると、異なる成長パターンを示します。そのため、水草の成長を観察することで、水草が適切なCO2供給を受けているかどうかを判断することができます。ただし、この方法の欠点は、経験が必要であることです。
水草のCO2濃度が適正かどうかを確認するのに役立つ種類はキューバパールグラスです。この水草は高いCO2濃度を必要とし、CO2濃度が低い場合に成長速度や形状が変化するため、状態を簡単に判断できます。通常、CO2濃度の変化に対する水草の反応を見るには、1〜2週間程度の時間がかかります。
水槽を立ち上げたばかりや環境が不安定な時期には、水草の成長に影響を及ぼす要因が他にもあります。水草の成長でCO2濃度を確認する前に、環境を安定させることが重要です。そのため、水槽を立ち上げる際にはサイクリングをおすすめします。特にコケの管理に不慣れな初心者の方は、サイクリングを行うことでコケの発生を抑制できます。
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水草のCO2不足の兆候
炭素は植物の乾燥した質量の約45%を構成しており、水草の健康と成長速度に大きな影響を与えます。CO2の不足は、さまざまな形で現れます。
- 栄養素や光量に問題はないが、葉や茎が細い。
- 水草の下部の茎はむき出しで古い葉はすぐに劣化し、健康な上葉だけが残ります。これはコケ類の発生原因となります。
- 通常は横に広がって成長する水草が立ち上がって成長する。
- 茎のむき出しと間伸びの組み合わせ。 多くの場合、CO2と酸素の両方が不足しています。
- 新芽が曲がり発育不全になる。
- 成長するにつれ小さくなっていく新芽。これはCO2不足が原因なことが最も多い兆候の1つです。
キューバパールグラスはCO2濃度を測る最適な水草の一つです。CO2不足の場合、葉が小さく立ち上がりますが、CO2濃度が高いと適切な大きさの葉が横に広がって成長します。栄養素に対する要求はそれほど高くないため、CO2濃度の状態を判断するのに優れた水草です。
左の写真はロタラ・ロトンディフォリアの典型的なCO2不足の兆候を示しています。茎が細長く、新しい葉が小さいです。細長い茎は通常、CO2不足と酸素不足の組み合わせを示唆しています。
ニューラージパールグラスは、前景の水草として育てるのが非常に簡単な種類の一つです。CO2を添加しなくても成長させることができます。ただし、CO2が豊富な水槽(右側の写真)と比較して、葉が小さくなります(左側の写真)。また、成長が遅く、コケに対してもより脆弱になることがあります。
ほとんどのモスは低いCO2濃度でも育てられ、CO2を添加しなくても育成できます。しかし、プレミアムモスは高いCO2濃度の環境(右側の写真)でより密集し、美しく成長します。また、触り心地が硬く感じられます。
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CO2濃度を測定するPH降下法とは?
この方法は非常に簡単です。KHを測定するための試薬とPHを測定するための測定器があれば、行うことができます。
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CO2濃度を測定するPH降下法の手順
- 水槽のKHを測定する。
- ライト点灯前のCO2を添加していない状態のPHを測定する。
- ライト点灯中にCO2添加しのPHを測定する。
これで水槽のKH、CO2添加前のPH、ライト点灯中のPHがわかったと思います。
水槽のKHが1から10の範囲にある場合、PHを1ポイント下げると、CO2濃度が約35ppmになります。
例えば、CO2を添加しない状態で水槽のPHが7だった場合、PHを6に下げることで理想的なCO2濃度に達します。ライトが点灯している間、PHを6に維持できれば、水草に安定してCO2を供給していることができていると言えます。
しかし、注意点が1つあります。前日にCO2を添加した場合、水槽内にまだCO2が残っている可能性があります。そのため、正確な値を測定するためには、水槽の水を一度容器に入れて、振ってCO2を飛ばした後に測定を行うことをおすすめします。
KHが1以下の場合の注意点
水槽のKHが0から1dkHの範囲にある場合、CO2濃度を30ppm以上にする目標を達成するためには、PHを約1.5ポイント下げる必要があります。CO2濃度を高く保つことは水草の成長に良い影響を与えますが、過度に高めると生体がCO2中毒に陥る危険性があります。特に、ガス交換が効率的でない状況では酸素濃度も低下し、危険性が増します。CO2濃度を最大限に上げる場合には、生体の状態を確認しながら注意深く行うことが重要です。
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水草水槽のPHを6以下まで下げても大丈夫?
結論として、問題はありません。自然界にはPHが低い場所が多く存在し、魚や水草もそうした環境で元気に生活しています。もちろん、すべての生物にとって問題が起こらないというわけではありませんが、一般的には低いPH環境でも多くの生物が適応できることを示しています。
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CO2添加する際のそれ以外の注意点
CO2濃度を一定に保つためには、水流も非常に重要です。水流が弱いと、CO2が水槽全体に効率的に行き渡らず、ガス交換にも影響を及ぼします。興味深いことに、水草はCO2がミスト(ガス)の形で存在していても吸収することができます。そのため、CO2のミストが水槽内全体に均等に行き渡っているかを目視で確認することが非常に重要です。リリィパイプとCO2のインライン化は、これを行うための最適な組み合わせと言えます。
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まとめ
デニスは言っています。「これまで多くの水槽を観察してきましたが、水草がうまく育たない主要な原因は、CO2の添加量が不足していることです」と。
デニスの2HR Wayの手法に出会ってから、CO2の重要性やガス交換について学びました。PH降下法と効果的なガス交換を組み合わせることで、理想的なCO2濃度に安定させることができるので、この手法を強くおすすめします。
CO2添加に関する一般的な質問については、以下の記事をご覧ください。