水草水槽で小さなシュリンプを飼う方法
今回は、水草水槽で小さなエビを飼う方法についてご紹介します。水草水槽でエビを飼うことは一般的ですが、特に小型のエビであるチェリーシュリンプやビーシュリンプは、育成がやや難しいとされています。これらのエビは水質に敏感で、繁殖させるには一定の知識が必要です。
この情報は、THE 2HR AQUARISTのデニスの研究結果に基づいています。
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小さなエビの種類と特徴
チェリーシュリンプは最大でも3cmほどの小型なエビですが、その中にも様々なカラーバリエーションが存在します。同様に、ビーシュリンプも豊富な種類があり、最大でも3cmまで成長します。ただし、ビーシュリンプは水質にやや敏感な傾向があります。
これらのエビはおとなしく、美しい体色が水草水槽でよく映えます。また、水草やレイアウト素材(石や流木)に生えたコケ類やデトリタスを消化してくれ、水槽内の清掃役としても重宝されます。
◻︎長所
美しくカラフル
コケ類を消費し、有機性廃棄物を分解します
他の生体に対して攻撃的ではない
水草水槽の環境で飼うのにおすすめ
◻︎短所
アンモニア、水質に敏感
大きな魚の餌になる
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エビが好む水槽環境
エビは小さくて繊細な生き物で、水質が良好で十分な濾過と成熟した環境を好みます。特にビーシュリンプは水質に対して特に敏感です。モスや石などは、表面にエビの餌となるバクテリアが住み着くため、エビにとって良い環境を提供します。
エビは自然の食物連鎖の最下部に位置しており、大きな魚や他の生体の餌食にされることがあります。特に稚エビに関しては、水槽内に隠れ場所を作ることで、魚との混泳中でも生存率が向上します。
エビは良好な濾過と流れの良い環境を好み、水槽内には他の生体と同様に十分な酸素が含まれていることが必要です。水草が健康に育ち、急激な変化がない安定した水槽が理想的です。そのため、水槽を立ち上げたばかりの初期にエビを導入することはおすすめできません。
エビなどの敏感な生体を導入する前には、 サイクリングを行い、水草が健康に育つ環境が整うまで導入を待つべきです。水草水槽は立ち上げてから数ヶ月は環境が不安定です。特にソイルを使用する場合、バクテリアは乾燥状態から水没状態に適応する必要があり、水草も環境に適応して成長するのに時間がかかります。
コケ類が発生する可能性もあり、立ち上げ初期は大幅な水換えを頻繁に行う必要が出ることもあります。ソイルやフィルター内のバクテリアは成熟するのに時間がかかります。これら立ち上げ初期の環境の不安定は水質に影響を与えます。
◻︎キーポイント
良好な濾過と流れ、成熟した環境を作ることで良好な水質を維持します。
隠れ場所があると生存率が上がります。
立ち上げ初期にエビの導入はおすすめできません。
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エビが好む水槽の水質
エビの種類によって好む水質も異なります。チェリーシュリンプは水質にあまり煩くなく、軟水から硬水までの広範囲で育てられます。一方で、ビーシュリンプは低いKHの水を好む傾向があります。
一般的に、安価なエビは育成が容易で適応性があります。一方で、高価なエビは水質に煩く繁殖が難しい傾向があります。エビを購入する前に、そのエビの好む環境を確認してください。
水温は21〜26度が適しています。高い水温では成長が早く、たくさん繁殖もしますが寿命が短くなります。
水草や魚と同様に、自身の水道水の水質に合ったエビを飼うのが簡単です。水道水の水質を調べる方法については下記の記事を参照ください。
◻︎エビが好む一般的な水質
チェリーシュリンプ
PH:5〜8
GH:3〜15
KH:0〜12
TDS 50〜400
ビーシュリンプ
PH:5.5〜7.5
GH:4〜8
KH:0〜4
TDS 50〜300
水槽のGHが低い場合は、APT SKYでGHを5〜7に上げることをおすすめします。
水質の値について詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
水質パラメーターが範囲内にあるからといって、エビを購入して水槽に入れることができるという意味ではありません。エビを水槽の水質にうまく順応させることは、エビの生存確率を上げるために重要です。そのため、自身の水槽と同様の水質を持つ店からエビを購入するのが最善です。それが不可能な場合は水合わせが重要になります。
チェリーシュリンプのような丈夫な品種は異なる水質に順応しやすいです。ビーシュリンプのような敏感な品種は、自身の水槽と同様の水質の店から買うことをおすすめします。
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CO2添加によるエビへの影響
水草水槽ではCO2添加によりPHが低下します。実際エビへの影響はどうでしょうか?多くのアクアリストが考えている事とは異なり、KHとGHが変化しない限りエビに影響はありません。(CO2添加でKHとGHの値は変化しません。)
CO2添加による生体への影響については、以下の記事を参照ください。
この水槽のKHは0近くになっています。CO2添加中のPHは6.5から5.1に約1.4ポイント低下します。チェリーシュリンプは、このような環境でも繁殖しています。エビに餌を時々与えると繁殖率が上がります。
ビーシュリンプもCO2添加をした水槽で繁殖します。しかし、繊細な種(特殊な要件を持つ高価な種)は、CO2濃度が高くなると繁殖が難しくなる可能性があります。また、頻繁に大きな水換えを行ったり、環境が不安定だとストレスを受ける可能性もあります。
繊細で高価なビーシュリンプを飼っていて、水草育成よりもエビの繁殖に重点を置きたい場合は、CO2添加なしでも育つ、簡単に育成できる水草を植えた水草水槽を作ることもできます。このような水草水槽はメンテナンスが簡単で、CO2添加がなくても水草が十分に成長します。水草の成長は遅くなりますが、それに伴うトリミングや植え替えの頻度が少なく、環境への負担も軽減されます。
ウィローモスを多く使ったCO2添加なしの水槽は、ほとんどメンテナンスを必要としません。この水槽では数週間に1度、30%の水換えを行っています。モスは2〜3ヶ月に1度程度、トリミングしています。水槽のサイズが熱帯魚飼育にはやや小さいかもしれませんが、この水草水槽ではビーシュリンプが繁殖しています。
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エビ水槽に肥料の投与は安全?
肥料中の銅がエビを危険にさらす可能性が一番心配です。しかし、ほとんどの水草用の液体肥料には、水質に敏感なエビを殺すほどの銅は含まれていません。 APTの肥料に含まれる銅は、生体に毒性がないようにキレート化されています。
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エビ水槽の水換えについて
水換えの水と水槽の水の水質パラメーターが一致する場合、大規模な水換え(例えば90%以上)自体はエビや水槽の安定性に影響を与えません。ただし、水温やその他のパラメーターに大きな違いがある可能性があります。また、水槽の水が急激に変わること自体が、生体にストレスを与える可能性もあります。
チェリーシュリンプやビーシュリンプは、大きな水の変化に問題なく耐えることができます。ただし、より繊細な種類のビーシュリンプの場合は、水換えを2週間に1度30%以内に抑えることをおすすめします。CO2添加なしでメンテナンスが少ない水槽は、繊細な種類のビーシュリンプを繁殖させるのに最適です。
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まとめ
成熟した水草水槽はエビにとって良い環境です。エビと水草の両方が健康な水槽は、生物学的に安定しており長期にわたって良好な水質を備えています。
コケ類を発生させるような環境、例えばアンモニアの発生、ろ過が未熟で流れの悪い水槽はエビに害を及ぼす可能性があります。
経験の浅いアクアリストは、CO2添加と肥料がエビに害を及ぼしていると考えがちです。特に繊細なビーシュリンプは、水槽内の環境の安定性の重要さを理解していない人が飼うと死亡率が高くなります。肥料やCO2添加とエビの死亡率に相関関係はありません。